ゾッとして眠れなくなる話

夜にふと思い出す怖い話。

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マイク|実話のようで怖い話

マイク


私が大学生だった頃の話です。孤独を感じることが多かったので、友達と一緒にいるような気分になりたくて、配信アプリでゲーム実況を始めました。視聴者とのリアルタイムのやり取りが唯一の楽しみで、一人暮らしのアパートでの夜が待ち遠しくなりました。

その日もいつものように、夜中に配信を始めました。部屋は静かで、外の音もほとんど聞こえません。ヘッドセットを装着し、ゲームの世界に没頭するのが日常になっていました。

「タクヤくん、またこのゲームかよ!」と、リスナーのコメントが流れます。

私は笑いながら、「今日は特別にクリアまでやってみせるよ」と返しました。

しばらくして、コメント欄に「今、声が聞こえた?」という書き込みがありました。人が増えてきたな、と嬉しく感じながら、「気のせいじゃない?」と軽く返しました。配信に夢中で、特に気にすることはありませんでした。

しかし、ゲームに集中していると、背後から確かに何かが動くような音が聞こえました。でも、その時は深く考えませんでした。一人暮らしのアパートは古いし、音が響きやすい。きっと風か何かだろうと。

でも、次第にその音が気になって仕方がなくなってきました。ドアが軋むような音や、低い声がささやくような音が断続的に耳に届くのです。私はついにイヤホンを外し、後ろを振り返りましたが、当然誰もいませんでした。

視聴者たちも何かを感じ取ったのか、「今、後ろに誰かいなかった?」とか「一人じゃないんじゃない?」とコメントを打ち始めます。薄気味悪くなり、冗談じゃ済まされないと感じ始めました。

配信が終わり、ためらいつつもカメラを切り、部屋の明かりをつけ直しました。すると、背後から「タクヤ、助けて」と囁く声が聞こえました。私は一瞬で凍りつき、振り返って家中を探しましたが、本当に誰もいないのです。

心臓がバクバクと騒ぎ立てる中、もう一度配信のコメント欄を確認しました。さっきまでのコメントがすべて消えていました。まるで最初から何もなかったかのように。

これはただの悪ふざけじゃない。私はもう一度立ち上がり、今度は逃げるようにアパートのドアまで向かいました。そしてドアを開けた瞬間、目の前に立っていたのは自分とそっくりの顔をした「もう一人のタクヤ」でした。

彼は静かに微笑みながら、「もう一人のタクヤが配信を続けているよ」と言いました。私はその言葉の意味を理解した瞬間、全身が震えました。この部屋に閉じ込められていたのは自分自身であり、配信をしていたのは、私の中の何か別のものだったのです。

震えながら目を覚ますと、またあの部屋に戻っていました。配信は再開され、カメラの向こうの視聴者は何事もなかったようにコメントを続けていました。

「タクヤくん、背後にいるよ」と、コメント欄には再び書かれています。

その瞬間、私の背後から何かが冷たい息を吹きかけ、視界が暗転しました。視聴者たちのコメントが、私の心臓の鼓動と共に消えていくのがわかりました。私の意識が遠のく中、最後に聞こえたのは、耳元で囁く「タクヤ、もう逃げられない」という声でした。


解説

この物語の恐怖の本質は、主人公が自分自身の存在を失ってしまうという、根源的な恐怖にあります。孤独を抱える大学生が配信アプリを通じて「誰か」とつながろうとする一方で、実際には「もう一人の自分」に飲み込まれていく様子が描かれています。この展開は、日常生活の中に潜む恐ろしさを浮き彫りにしています。

物語の初めは、普通の配信からスタートし、視聴者とのやり取りを楽しんでいた主人公ですが、次第に背後からの音や声が気になり始めます。特に「今、声が聞こえた?」という視聴者のコメントは、彼自身が感じている異変を強調する重要な伏線です。この時点で、周囲の状況が彼の感覚とズレていることが示唆されています。

また、背後で囁く「タクヤ、助けて」という声は、主人公の恐怖を増幅させる要素です。この声は、彼が一人ではないことを示していますが、実際には彼の内面の葛藤や孤独感を反映したものと考えられます。ここでの音や声は、単なる外的な脅威ではなく、彼自身の心の中から生まれたものだと捉えることで、より深い恐怖が浮かび上がります。

ラストで明らかになるのは、主人公が配信を通じて自分自身の「もう一人のタクヤ」を生み出してしまったということです。配信を続けるうちに、実際の彼は「もう一人のタクヤ」に取り込まれ、意識が遠のいていくのです。「もう一人のタクヤが配信を続けている」という言葉は、彼が完全に自分を失ってしまったことを象徴しています。この時、視聴者のコメントが消えてしまうのも、彼の存在が薄れていくことを暗示しています。

つまり、主人公は孤独から逃げるために配信を始めたものの、結果的にはその孤独が彼を飲み込み、もう一人の自分が彼の代わりに存在することになったのです。最後に聞こえる「タクヤ、もう逃げられない」という声は、彼が完全に自分を失い、二度と戻れない状況に陥ったことを示しています。

この物語は、孤独や自己喪失というテーマを巧妙に描いており、日常の中に潜む恐怖を再認識させてくれます。もう一度読み返すと、最初の違和感がより鮮明に感じられ、恐怖が一層深まることでしょう。

まだ眠れそうなら、次の怖い話へ。

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