メッセージ|実話のようで怖い話
メッセージ
私が大学生だった頃の話です。
ある日、いつものようにスマホを手に取り、SNSの通知を確認していると、見知らぬアカウントからメッセージが届いていました。「山田」と名乗るその人物は、私の高校時代の友人だと言います。私は不思議に思いつつも、彼の名前には聞き覚えがありませんでした。
しかし、彼は私の高校時代についての詳細を知っていました。例えば、私が好きだったアニメや、部活の合宿での些細な会話の内容まで。「懐かしいなぁ」と少しずつ会話に引き込まれていきました。
ただ、違和感もありました。山田は、私が高校時代に話したことの一部を微妙に間違えているのです。好きだったキャラクターの名前を少しだけ間違えて覚えている。それでも、懐かしさが勝り、つい会話を続けてしまいました。
話題が現在の生活に移ると、彼はさらに詳しく話し始めました。ある日の夜、私が友人と行った居酒屋の名前や、アルバイト先の同僚の名前まで知っていました。
「どうしてそこまで知っているんだろう」と不安になり、アルバイト先の友人たちに確認しましたが、誰も「山田」という名前の人を知りませんでした。それでも、「自分が忘れているだけかも」と無理やり納得しようとしていました。しかし、心の奥底で不気味な感覚が消えませんでした。
ある日、山田からのメッセージにこんな言葉がありました。
「最近、君が行った映画、面白かったって言ってたね」。
確かにその日は映画を観に行ったのですが、そのことはSNSには書いていません。しかも、その映画には一人で行ったはずです。ますます不安が募り、私は彼に「どうやって私のことを知っているの?」と尋ねました。
山田からの返信はあっけないものでした。
「君のことはずっと見ていたから」。
この言葉を見た瞬間、氷のような冷たさが背筋を駆け抜けました。一つの記憶が蘇りました。高校時代に私たちのクラスにいた一人の男子生徒。彼は影が薄く、いつも一人で過ごしていました。そしてある日突然、学校に来なくなり、いつの間にかその存在は忘れ去られていました。彼の名前は――山田。
彼のメッセージはただの再会の願いではありませんでした。それは、ずっと見ていた、そして今も見ているという警告だったのです。
私はすぐにそのアカウントをブロックし、警察にも相談しましたが、特に進展はありませんでした。安心できない日々が続く中、ある日、自宅からまたメッセージが届きました。
「今、君の後ろにいるよ」。
画面越しに見えていたのは、見知らぬ顔の写真でした。誰もいないはずの自分の部屋の写真です。どうやって撮られたのか、考えるだけで恐ろしかった。
その日から、私は一人でいることが怖くなり、常に誰かと一緒にいるようにしています。しかし、部屋に戻るたびに、あのメッセージが届いた瞬間を思い出し、背筋が凍る思いがします。
そして、ふとした瞬間、誰かの視線を感じることがあります。まるで、どこかからずっと見られているかのように。
解説
この物語の最も恐ろしい点は、主人公が知らないうちに、かつての同級生が自分をずっと見ていたという事実です。SNSを通じて届く知らない相手からのメッセージは、最初は日常的な出来事として受け止められますが、徐々にその恐怖が増していく様子が巧みに描かれています。
物語の中での違和感は、最初は小さなものでした。主人公が知らないはずの山田という人物が、彼女の高校時代の思い出や最近の出来事を知っていることが、次第に不安を募らせます。特に、彼女が一人で観に行った映画のことを知っていたことは、彼女にとって大きな不安要素でした。また、山田が微妙に記憶を間違えている点も、彼女の心に引っかかります。こうした小さな違和感が積み重なることで、物語は緊張感を高めていきます。
そして、ラストで山田の正体が明らかになる瞬間、すべての伏線が一つに繋がります。山田は、高校時代にクラスメートだった男子生徒で、影が薄く、いつも一人で過ごしていた彼でした。彼が突然学校に来なくなり、その存在が忘れ去られてしまったという記憶が、主人公の頭の中に蘇ります。「ずっと見ていた」という言葉は、再会の願いではなく、彼女に対する恐ろしい警告だったのです。つまり、彼は主人公の生活をずっと監視していたということになります。
物語の最後に届いたメッセージ、「今、君の後ろにいるよ」という言葉は、主人公が一人でいることへの恐怖を決定的にします。見知らぬ顔が映った写真は、彼女のプライバシーを侵害し、彼女がどれだけ危険な状況に置かれているかを示しています。これは、山田が彼女を「見ている」だけではなく、実際に彼女の生活に侵入していることを示唆しています。
この物語は、過去の記憶や人間関係がどのように影を落とし、それが恐怖へと変わる様子を描いています。主人公が感じた違和感や不安は、すべて山田の存在に繋がっており、彼女が日常の中で見落としがちな恐怖が、実は身近に潜んでいたことを教えてくれます。この話を読み返すと、最初の段階からの違和感がより一層恐ろしいものに感じられるでしょう。
まだ眠れそうなら、次の怖い話へ。
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